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ユニオン
力は「ユニオン/団結」に在り。場所はアメリカ合衆国。ユニオンの活動は二十世紀初頭に起こった労働者運動に端を発する。工場や鉱山で働く者達が団結し、互いを支援するために各地から集まった。彼らは互いを守るために、強者から弱者を守るために、富めるものから貧しいものを守るために、搾取する側から一般大衆を守るために集まったのだ。シカゴにすむ労働者たちは彼らの子どもたちの病気が自然発生したものでは無いことに気付いた。彼らの目からものを見た時、工場主以外の何かが彼らを搾取していた。労働者たちから肉を、血を、そして魂を吸い上げるために。それは正に、資本家たちが労働者にしていた事と同じ枠組みなのだ。団結した彼らは恐るべき力を発揮した。労働者たちの活動が資産家たちの態度を変えさせた様に、彼らはその怪物を撃退した。シカゴのユニオンは数年にわたって活動を続け、戦いが終結を迎えると同時にユニオンは解体された。
欧米国家のいたるところで起こっていた労働者運動は、単なる組合の結成に留まらなかった。それは十九世紀末および1920年代のイギリスでも、1930年代および70年代のオーストラリアにおいても発生していたのだ。夫々の時代で人々は互いを守るために、誰かを守るために団結し、またある時は彼らに害をなす怪物の存在に気付いて、それに対処するため行動していた。
長い間、彼らの活動はローカルに発生し、しかも短期間なものだった。事態が変わったのは1999年に、活動家の一人であるホリー・ラミレスがインターネットを通じて情報収集を開始したときである。彼女は英語を公用語とする国々で、怪物に対処するため結成されたいくつかのグループを発見した。彼らの日記やBBSからは、そう明記されていないながらも、労働者階級のハンターが直面している葛藤に満ちていた。そのBBSで見た子育てに関する書き込みは、特殊な経験をした者でなければ分からないであろう投稿だった。そう、ホリーと同じような経験を持つ者でなければ。労働者運動について学んでいた彼女はインターネットを通じて世界中の人々を結び付け始めた。最初のユニオンBBSは2000年3月に公開された。その3ヵ月後、BBSは閉鎖されてしまった。おバカなことに、ユニオンBBSは参加者の審査をしていなかった。アクセス制限もなかった。そして十数人を越えるメンバーが――日々の仕事やビジルに追われ、インターネットとかセキュリティとかよぐわがんねえメンバーが――致命的な情報を晒したために命を落とした。
でもね、ホリーと仲間たちは諦めなかったね。悲しい事が起きまくった2000年の春から、BBSは4回移転し、移転するごとにセキュリティは強化された。現在、BBSは紹介制らしいよ。ネットワーク管理者は六カ月おきに入れ替わり、ニュースだのブログだのフォーラムだのに目を光らせてる。もしもヒントを見つけたら、その地域に住んでるメンバーが調査を開始。もしもヒントが本物、つまり新しいハンターが居るっぽければ、サポートを申し出るわけです。
ネットワークの参加者の多くは、資金援助もやってる。サイトの運営費用だけでなく、夫々のビジルをサポートするために。武装とか、医療費とか、葬式代とか。普通の労働者組合のように、ユニオンは不幸にあったメンバーの家族にも援助の手を広げている。オンラインを通して人々がつながり、友情を育み、信頼関係を築き上げている。ネット婚したやつだっている。まあ公式な団体じゃあ無いし、アドホック風味ですが、信じる心はまあ偉大だっつう事で。
今のユニオン、政治色は薄れたかも知れないが、やってることはシカゴのユニオンと同じだよ。普通の人が一緒になって、彼らを虐げる存在に対抗するわけです。ユニオンはかなり世界的組織と呼べるっぽい。そんな今のユニオンを見て、ホリーはどう思うだろうか。ユニオンBBSの全てのフォーラムのトップには彼女のバナーがあって、そこからは彼女の功績について書かれたページに飛べる。2005年、ホリーはビジルの最中に命を失った。ユニオンのメンバーの多くはホリーを個人的に知ってる面々だ。彼らは必要とあれば、ホリーが遣りきれなかった仕事を終わらせようとするだろう。だってホリーが居なければ、今のユニオンはそもそも存在し得ないんだから。