プレビュー

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ロング・ナイト
苦行の民兵
お前が目を見張っていなければ、やつらはやってくる、闇夜に乗じる盗人のように。
世界はそのうち終わる。主は敬虔なる者たちだけを天の国へといざない、残りの屑どもは非キリスト者による苛烈な支配を受ける。そんな中、残りの屑どもを救わんとイエス様が再臨され、全てを血と炎にて終わらせる。なぜならば、イエス様はわれらを愛しておられるからだ。違うか?ああ、違うな。
まあ、違うとはいえ、その全てではない。例えば天の国の樹立は、良き子らが天国というゆりかごへ連れられるくだりについては、まあ、絶対に起こりはしない。(無論天の国の樹立は既に行われており、現在地球上に住む者たちは全て選ばれなかった屑どもだと考える者もいるが)そうだ、真実とは苦行だ。これは戦争。正義と邪悪との戦い、ハルマゲドンなんだ。主の御力とサタンの軍勢との戦いだ。人々は天の国の樹立をいつまで待とうと徒労に終わる。人々が頼りとすべきはその聖書であり、その声であり、その拳であり、その拳銃なのだ。
この世界は罪で穢れきっている。そしてわれらが人類の正しさを証明できない限り、キリストは再臨されないのだ。そうしてる間に起こるのは、戦争、疫病、飢餓、そして恐怖を超える恐怖。少なくない者たちは、この恐怖というやつがただの言い回しでないことを知っている。その恐怖は現実なんだ。やつらはそこらじゅうを歩き回り、罪なき者たちから奪い、悪しき行いに手を染める。主がそれら恐怖から良き子らをお守りくださるとすればどんなに素晴らしいか。だが、それは起こらないんだ。そうなったら、自分たちが行動するしかない。彼らは福音を家族や友人に報せる。彼らは良き隣人であろうとする。そして、彼らは怪物を狩るのだ。
ロング・ナイトは1970年代に結成された。しかし参加メンバーから考えれば、その活動は結成以前から行われていたのだ。この苦行の民兵だが、創始者については記されていない。数少ないウェブサイトを除けば、組織構造というものも存在しない。
ロング・ナイトのメンバーはブランチ・ダビディアン*1を思わせる武装カルトや、「ファミリー・バリュー」の支持者、サバイバリスト、米国南部の裕福な原理主義者、中流階級福音主義者などが含まれる。彼らは米国南部、豪州、英国南西部で活動している。そしてメンバーの其々が目の前まで迫った終末に対する数多くの信念を持っている。
其々のメンバーは何百もの原理主義カルト集団に属している。メンバーの中にはよりリベラルなカルトに属する者もいて、迷える信者の中から「真の教会の人々」を見つけ出そうとしている。彼らはまずカルト内で少人数からなるグループを作る。そして、教会の教えでは説明できない悩みを抱えていそうな他のカルトメンバーを探し出し、彼を誘い出し、いくつかの質問をし、真実を見極め、時がきたらそのメンバーを狩りに連れて行く。実際の狩りにおけるスリルや危険は、ロング・ナイトの新規参入者がその活動を理解するに十分だからだ。
ロング・ナイトのハンターたちはしるしを見るという、ハルマゲドンが近いことのしるしである。しかし、もしもそのしるしこそが終末の先触れだとしたらどうだろうか?戦に次ぐ戦の、地に落ちるニガヨモギの星の、そして666の獣や大淫婦バビロンの目覚めの先触れだとしたらどうだろうか?もしもそれらのしるしが現れることこそサタンの目論見だとしたら、そのためにサタンの手下どもが暗躍しているとしたらどうだろうか?もしもサタンの手下どもを滅ぼしてから出なければ、主の御力は現れないのだとしたらどうだろうか?
彼らはなんとなくではあるが苦行を必要なものだと理解している。しかしそこにはキリスト者の働きが無ければならない。世界は終りなき夜に閉ざされている。しかしわれらが苦行を成し遂げさえすれば、イエスの再臨によって朝がもたらされる。(黙示録第22章5節)だからこそ、彼らはロング・ナイト(長き夜)なのだ。人類が輝ける栄光を手に入れる前には、すさまじい恐怖に打ち勝たねばならないことを知る戦士たちなのだ。
敵について
魔法を使う恐ろしげな存在とは即ちサタンの手下に相違ない。悪魔や魔法を使う者たちの存在は昔から知られている――イエス様は数多くの悪魔を祓っているし、聖ペテロは魔術師シモンと戦った――しかし時今に至って、それらの数は今までに無いものとなっている。
無論、その悪は止めねばなない。だがロング・ナイトのメンバーも無慈悲ではない。彼らの信条は、突き詰めれば神の愛に他ならないからだ。例えばロング・ナイトのセルが魔術師を捕らえた場合、その魔術師を独房に監禁する。彼らはそこで魔術師に教えを説き、罪を告白するよう勧めるだろう。もしも魔術師が告白しないのならば、まずは彼の書物を全て焼いてしまうだろう。それでも十分でなければ、その行為の残酷さを悔いながら彼の舌を切り取るだろう。それさえも十分でなければ、彼を射殺するだろう。審判の日は、終末を待とうと待つまいと訪れるのだ。
またロング・ナイトのメンバーは愚かでもない。口先だけならば誰だって罪を悔い改めることができるからだ。魔術師が改悛したと言い、ロング・ナイトたちは喜んで彼を見送る。無論、魔術師は新たな計画を生み出しサタンの手下として動き始める。しかしロング・ナイトは見ている。魔術師が再び罪を犯した瞬間、その命を止めるために。ロング・ナイトはその戦いに二度目は無いという覚悟で臨んでいる。だから、二度目の罪を許すことも無いのだ。
人間離れした存在には慈悲の欠片も必要ない。狼男はその魂と引き換えに毛むくじゃらの肉体を手に入れた。吸血鬼は呪われた存在だ。呪われていないならば、吸血鬼などに成り果てるはずが無いのだから。悪魔は地獄の住人だ。それらはすべからく滅ぼされるべきなのだ。そしてそれら全てが息絶え、サタンの元へと送り返された時、苦行は終わりと黙示録が始まるのだ。

*1:1993年に米テキサス州で起こった……ああ、面倒くさいからググってください。当時は「Wacco」じゃないよ「Waco」だよとか言ってた