ネルガルの帰還について

みんなのネルガルは、どうだったかな?地獄の公子を、殺せたかな?じゃあ、アラン・ソバーレイン君はどうなったのか、見てみよう

アラン・ソバーレインの机が、まるで大砲から打ち出されたかの様に、樫の木のドアを突き破った。ステファンは驚いて飛び上がり、ドアの欠片が床に散乱するよりも早く、階段を駆け下りていった。ステファンは若かったが、アランが不機嫌な場合には、距離を取る事くらい心得ていたのだ。オフィスの中、アランはゆっくりと歩きながら、自身の利益のために何をするべきだったのか考えていた。

不信感覆う中、アランはカマリリャ側で協力体制を築くのが、困難であるに違いないと考えていた。しかしながら、血族たちの近視眼に、彼は未だ困惑しているのだった。深刻な危機を目の前にしながら、である。アランの呼びかけが、全く日の目を見なかったわけではない。ところが、そこで得られた協力とは、協力と呼んで差し支えない程度のものだ。これは負け戦なのだと、アランは確信していた。悪魔崇拝者の勢力を根絶するために送られる人員のリストを見て、即座にそう判断できたのだ。確かにリストの中には、有象無象にまぎれて有能な人材も含まれている。それでも、作戦成功を考えるならば、十分とはいえないものであった。

さらに、公子達は完璧な政治感覚により、手を抜いていると判断されないような最低限度の支援のみを行ってきた。彼らの手腕に対し、アランは羨望せざるを得なかった。結果としてほとんどの公子は、直接的影響を蒙らない限り、この件への関与を拒んだ。無論、アランは理解していた。悪魔崇拝者の勢力が一度興れば、いかなる版図も無関係では無いのだ。

アランは床に散らばった書類をまとめると、ブリーフケースに仕舞った。飛行機が、そしてハルデシュタット氏が、彼を待っている。オフィスを後にしながら、アランは最後にオフィスを見ておきたいという衝動を抑えていた。ハルデシュタット氏が慈悲深いことを、祈るしかなかった。